模倣全時空記憶集積回路

アンディーメンテ関連の情報を蓄積します。 ※はてなグループから移転しました。

ボカミツ感想のような何か

ボカミツこと「ボカロ界のヒミツの事件譜」の感想を前に書いてました。

ネタバレ多少あり。深夜に書いたからか暴走してます。

bookclub.kodansha.co.jp

先に断わっておきますが、ボカロ×ミステリー小説として読んだ感想は1ミリも出てきません。どちらかというとアンディーメンテファンとしてエレGYの続きとして読んだら妄想が膨らんでしまった感想です。

ちなみに星海社の先行試読公募に参加しているのでこの感想を書いたのは発売前の7月29日です。(8月に入ってから一部加筆修正しました)

そんな感想でもよい場合はスクロールして読んでくださいね。

先行試読の後ボカミツについて悶々と考えていました。

似ているけど細部が微妙に違うパラレルワールドという設定はよくあるものです。私も結構好きな設定です。小説はあんまり詳しくないのでパッと思い浮かばないのですが、ゲームだとDQ6とかクロノクロスとかですね。ふとしたきっかけに別の世界軸に飛んじゃって物語が進むという話。

では、その二つの世界はどのようなものでしょうか。あくまでその二つの世界はプレイヤーである「私」とは別の世界の出来事です。「私」はさらに別の世界に存在します。たとえば、例に挙げたクロノクロスをやっているプレイヤー自身はその両者とも違う第三の世界(=現実世界)に居て、メタな立場でキャラクターを操り二つの世界に干渉しています。

ここまで、唐突になぜこんな話をしたかというと、私が「ボカミツ」を読んだ時にパラレルワールドを感じたからです。ただし、「ボカミツ」は普通の人が読むとジェバンニPとエレGY、そしてジェバンニPに関係する人たちが織りなすちょっと感動する話という印象になるだろうと思っています。話題に出したような平行世界の要素はあまり出てきません。

では、なぜ私がパラレルワールドを感じたのでしょうか。結論から言ってしまうと今回の話はパラレルワールドが現実世界と小説世界だったからです。もちろん普通はそんなこと思わないでしょう。しかし、重度のAMファンである私にとって、あの小説世界はあまりにも現実によく似た世界を作り上げていました。

あの小説には私が知っている人物が「泉和良」以外にも複数人出てきます。しかもそれは『おやすみ、ムートン』の「剣さん」や、『わたしのおわり』の「parioさん」のような単なるモチーフではなく、実在する人物としてリアルに描写されています。

もしかすると、氏のデビュー作の『エレGY』もそうだったのかもしれません。ただ、あの話に関わってくる人々を知っているAMファンはほとんど居ないでしょう。作中の小山田さんが実在する人物であっても、私はSISTERのカードになっているというぐらいしか知りませんし、会ったこともないので泉和良の作り上げた小説世界に完結して読めたのです。

私はTwitterで「エレGYやジスカルド・デッドエンドの時も少し感じたのですが、今回は特にフィクションとノンフィクションが混ざりあう感じが凄かったです これは多分泉さんのファンとしての視点なので若干特殊なのかもしれませんがとても不思議な感覚でした」と書きました。

これを整理してみると、フィクションとノンフィクション…つまり小説世界と現実世界というパラレルワールドの接点が自分の視点だったということになります。小説を読むことで(前述のゲームのように干渉はできませんが)二つのパラレルワールドの接点として自分が存在している。そんな感覚だったのです。

自分が認識している現実世界での出来事が、作中でも起きていることがあります。逆に確実に小説世界でしか起きていないこともあります。さらには「私が認識していない」ために小説世界でしか起きていないように見えることもあるのではないかと思われます。正直、作中の出来事の大半がフィクションかノンフィクションなのか分からないのです。小説世界のパラレル性を確保するのが私自身の経験という不思議なことが起きます。

逆に考えると私のいるこの世界も小説世界とパラレルであり等価な存在と言えるでしょう。アンディーメンテ作品では「アケローン」というシミュレータの中に生み出された宇宙で様々な出来事が起こります。アンディーメンテ作品でキャラクターが突然別作品に出てきたりするのは、基本的にはアケローンに蓄積された原宇宙の要素を引っ張ってきてきているからという解釈もあるのです。「アケローン」はある意味アンディーメンテというものが作り出した世界と言えるでしょう。

泉和良の小説がアンディーメンテ作品であるかというのは意見が分かれる所ではあるでしょうが、この『ボカミツ』という作品で「ついに私が認識している範囲での「現実世界」もアンディーメンテの作り出す「アケローン」の一部となった。」そんな気がしました。この作品でノーネームワールドで出てきた『竹原理論』を身近に感じ取ることができたのはとても素晴らしいことだと思います。

追記:些細なことですが、先日の72時間ホラーゲーム実況生放送の際の発言によって、小説内のキャラ設定が作者の妄想によるものだったということが分かりました。そうか…奴は…しすみは…レベモッチョネだった。世界を具現化する能力者だったんだ…。現実世界と小説世界の境界が崩れていく。